PR

【技術士・電気電子】《Ⅱ-1》ミリ波の利用

問題 Ⅱ-1-4

 陸上移動無線で今後必要となる超高速・大容量伝送を実現するために、広い帯域を確保できるミリ波を利用することが検討されている。ミリ波を利用するに当たって、克服すべき電波伝搬上の課題を3つ挙げ、その概要を述べよ。これらの課題を克服するために、ミリ波の特徴を活かして高度化したMIMO(Multiple Input and Multiple Output)技術が検討されているが、この高度化したMIMOの概要と特徴を述べよ。

解答

ミリ波は数十GHz帯の高周波数であり広帯域確保が可能であるが、電波伝搬上の課題が存在する。第一に伝搬損失の増大であり、周波数が高いほど自由空間損失が大きく通信距離が短くなる。第二に遮蔽損失が大きい点であり、建物や人体、樹木等による遮断の影響を受けやすく回折も起こりにくい。第三に降雨減衰であり、雨粒による吸収・散乱により通信品質が劣化する。

これらの課題に対し、高度化したMIMO技術が有効である。ミリ波は波長が短いためアンテナを小型化でき、多数のアンテナ素子を高密度に配置したMassive MIMOが実現可能となる。この構成によりビームフォーミングを用いて電波を特定方向に集中させることで、伝搬損失を補償し到達距離を延伸できる。また、複数ビームを形成することで空間多重伝送を行い、通信容量の向上が可能である。さらに、ビームの方向を動的に制御するビームトラッキングにより、移動体や遮蔽に対して柔軟に対応できる。

以上より、ミリ波の課題は大きいものの、その特性を活かしたMassive MIMOにより高信頼かつ大容量通信が実現可能である。


① 回答内容の分かりやすく詳しい解説

ミリ波は「広い帯域が使える=高速通信が可能」という大きなメリットがあるが、その代わりに電波としては扱いにくい性質を持つ。

まず重要なのは「届きにくい」という点である。周波数が高くなるほど電波は減衰しやすく、遠くまで届かない。また、建物や人に遮られると簡単に通信が途切れる。さらに雨でも減衰するため、環境の影響を強く受ける。

これを解決するのがMassive MIMOである。ミリ波は波長が短いため、アンテナをたくさん並べることができる。この多数アンテナを使って電波を細いビームとして集中させる(ビームフォーミング)ことで、「狙って飛ばす」ことが可能になる。

さらに、複数のビームを同時に使うことで、一度に複数のデータを送る(空間多重)ことができ、高速化につながる。


② 回答内の技術的重要語句の分かりやすく詳しい解説

  • ミリ波
    周波数30GHz前後の電波。広帯域が確保でき高速通信に適する。
  • 伝搬損失(自由空間損失)
    距離や周波数に依存して電波が減衰する現象。高周波ほど大きい。
  • 遮蔽損失
    障害物により電波が遮られて減衰する現象。ミリ波では特に顕著。
  • 降雨減衰
    雨粒による吸収・散乱で電波が弱くなる現象。
  • Massive MIMO
    多数のアンテナを用いるMIMO。ビーム制御と容量向上を両立。
  • ビームフォーミング
    アンテナの位相制御により電波を特定方向に集中させる技術。

③ 類似技術用語の紹介と解説

  • ビームトラッキング
    移動体に合わせてビーム方向を追従させる技術。
  • ハイブリッドビームフォーミング
    アナログとデジタルを組み合わせた効率的なビーム制御方式。
  • スモールセル
    基地局を小型・高密度に配置することでカバーを補う方式。
  • サブ6GHz帯
    ミリ波より低周波の帯域。伝搬性に優れるが帯域は狭い。

④ 今後の展望と代替技術

今後の6Gでは、さらに高周波であるテラヘルツ帯の活用が検討されており、超大容量通信が期待される。一方で伝搬損失はさらに大きくなるため、より高度なビーム制御やAIによる最適化が必要となる。

また、RIS(再構成可能インテリジェント表面)による反射制御や、超高密度セル配置との組み合わせも重要となる。

代替技術としては、光無線通信や可視光通信があり、電波と異なる伝搬特性を活かした通信手段として期待されている。

タイトルとURLをコピーしました