問題 Ⅱ-1-3
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調信号の生成法について説明せよ。さらにOFDM変調信号の持つ利点と欠点をそれぞれ説明し、どのような通信システムへの適用がふさわしいか述べよ。
解答
OFDMは、広帯域信号を多数の直交するサブキャリアに分割し、各サブキャリアに低速データを並列に割り当てて伝送する方式である。送信側では、入力ビット列をシリアル/パラレル変換し、各系列をQAM等で変調した後、逆高速フーリエ変換(IFFT)により時間波形を生成する。さらにマルチパスの影響を低減するため、シンボル先頭にガードインターバル(循環プレフィックス)を付加して送信する。受信側では、これを除去した後に高速フーリエ変換(FFT)により周波数領域に戻し、各サブキャリアごとに復調する。
OFDMの利点は、サブキャリアを低速化することでシンボル長が長くなり、遅延波の影響を受けにくくマルチパス環境に強い点にある。また、周波数選択性フェージングに対してはサブキャリア単位で等化が可能であり、等化処理が簡易である。さらに、サブキャリア間の直交性により周波数利用効率が高い。
一方、欠点としてピーク対平均電力比(PAPR)が大きく、電力増幅器の効率低下や歪みの影響を受けやすい点がある。また、周波数オフセットや位相雑音に敏感であり、同期精度が要求される。
以上より、OFDMはマルチパスの影響が大きい広帯域無線通信に適しており、無線LANや携帯通信などに広く適用されている。
① 回答内容の分かりやすく詳しい解説
OFDMの本質は「通信をたくさんの細いチャネルに分けて同時に送る」ことである。従来の単一キャリア方式では高速化するとシンボルが短くなり、反射波の影響(マルチパス)を受けやすくなる。
これに対しOFDMでは、データを分割してそれぞれを低速で送るため、シンボルが長くなり、遅延波の影響を吸収しやすくなる。また、ガードインターバルを入れることで、遅延波が次のシンボルに影響するのを防ぐ。
IFFT/FFTを使うことで、複雑な多重処理を効率的に実現できる点も重要である。
② 回答内の技術的重要語句の分かりやすく詳しい解説
- OFDM
多数の直交サブキャリアを用いた並列伝送方式。高速・高効率通信に適する。 - サブキャリア
分割された各周波数チャネル。互いに直交しているため干渉しない。 - IFFT/FFT
周波数領域と時間領域を変換する演算。OFDMの実装の中核。 - ガードインターバル(循環プレフィックス)
シンボル間干渉を防ぐために挿入する余裕時間。 - PAPR
信号のピーク電力と平均電力の比。高いと増幅器設計が難しくなる。
③ 類似技術用語の紹介と解説
- SC-FDMA
単一キャリア特性を持つ多重方式。PAPRが低く上り回線に適用。 - CDMA
符号で多重化する方式。干渉耐性に優れるが帯域効率は低め。 - FDM
周波数分割多重。OFDMはその発展形で直交性を利用。 - イコライザ
伝搬歪みを補償する回路。OFDMでは簡略化可能。
④ 今後の展望と代替技術
OFDMは5Gでも中核技術として採用されているが、今後はさらに高周波帯や高速移動環境への対応が求められる。そのため、PAPR低減技術や同期精度向上技術の高度化が進む。
また、6Gに向けては、OTFS(遅延・ドップラー領域変調)など、移動体環境に強い新方式も研究されている。
代替技術としては、SC-FDMAやFBMC(フィルタバンクマルチキャリア)などがあり、用途に応じた使い分けが重要となる。
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